特集
徳島で発見した日本の原風景
秘境を訪れるなら今がチャンス!
徳島県上勝町
みなさんは「徳島」と言えば何を思い浮かべますか?
阿波踊り、鳴門の渦潮、すだち…。
せいぜいこんなものだと思います。
徳島県は都道府県魅力度ランキングでワースト2位。
宿泊者数では全国で最下位です。
でも、僕はそんな徳島に強烈に惹かれました。
上勝町という山間にある小さな町に一目惚れして東京から移住。
今、徳島のあちこちで同じような移住者が増えているのです。
僕が感じた徳島の魅力、
それは“秘境”と言っていいほどの圧倒的な田舎感と
世界の“最先端”を目指す意外な取り組みでした。
今回は僕の人生を変えた上勝町の魅力をご紹介します。
文・仁木啓介(映像クリエイター)
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観光客が来ないから残った日本の原風景
山奥の秘境で昔ながらの暮らしを見つけた
上勝町は徳島市から車で1時間、周囲を山に囲まれた小さな町です。
町の中心を走る県道16号沿いには産直市や温泉がありますが、観光地ではないので訪れる人はそれほど多くありません。一見するとどこにでもある田舎町。でも、上勝町の魅力は県道から横道に入り、険しい山道を分け入った先にあるのです。
杉に囲まれた山道を抜けると見えてくるのが樫原の棚田。その風景は江戸時代からほとんど変わっていません。
そして、山犬嶽の原生林には巨石を苔が覆う神秘的な世界が広がります。秋、展望岩に登ると眼下には見事な紅葉。最近は少しずつ観光客も増えてきていますが、平日にはまだ雄大な大自然を独り占めすることができます。
上勝町に来て僕が一番興味を惹かれたのは山の中にある集落でした。上勝町は面積の85%が山林です。そのあちこちに55の小さな集落が点在しています。険しい山を切り開き斜面にへばりつくように建てられた家々。大きな茅葺屋根はトタンで覆われていますが、100年、200年と続く古民家です。水は山奥の沢から引き、米や野菜は自給自足。薪を使って風呂を沸かし、囲炉裏やかまどで料理する。そんな昔ながらの暮らしが今も残っているのです。
これまでも日本各地を旅して旅館や温泉などで囲炉裏や五右衛門風呂を見たことはありました。でも暮らしの中でこれほど当たり前に薪を使っている人たちに会うのは初めてでした。不便な山奥、観光地として開発されることがなかったからこそ残った昔ながらの暮らし。
気がつくと僕はこの秘境に恋をしていました。
山奥で生まれた最先端の取り組み
秘境は今、変わりつつある
観光地としてはほとんど知られていない上勝町ですが、地域活性化や環境問題に関心のある人には有名な町です。今から30年前、和食の料理を飾るモミジやナンテンなどの葉っぱを売り出して大成功した葉っぱビジネス「彩(いろどり)」は地域活性化のトップランナーとして知られ、全国から視察者がやってきます。
そして、2020年までに町内から出る焼却・埋め立てごみをゼロにすることを目指すゼロ・ウェイスト運動。ゼロ・ウェイストとは無駄・ごみ・浪費をなくすという意味。町のごみステーションには町民自らがごみを持ち込み、45種類に分別して可能な限りリサイクル。ゼロ・ウェイストは最先端の環境政策として海外に報道され、近年は世界各地から研修や視察の人が訪れるようになりました。
今、こんな町の取り組みに惹かれて上勝町に移住し、起業する若者たちが増えています。ポールスターはゼロ・ウェイストの精神にのっとったごみや無駄を出さないカフェ。地元食材にこだわった料理には季節の葉っぱを飾り、上勝町を五感で感じることができます。
RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Store(ライズ アンド ウィン ブルーイング)はクラフトビールを作っているマイクロ・ブリュワリー。建物の窓枠は使われなくなった古民家の廃材。シャンデリアにはガラス瓶が使われています。上勝町特産の阿波晩茶やゆこうを使った地ビールが楽しめる人気急上昇のスポットです。
これまで観光で訪れる人は少なかった上勝町ですが、新しいお店ができて少しずつ変わり始めています。一方で山奥に残る秘境の暮らしは高齢化でどんどん失われつつあります。秘境・上勝を目指すなら今がチャンス。気になったお店を訪ねて店員さんに声を掛けてみてください。山奥の秘境に通じる貴重な情報がきっと手に入るはずです。
常識と価値観が揺さぶられる旅
秘境に恋した僕は人生が変わった
今から10年前、初めて上勝町を訪れた僕は衝撃を受けました。それは現代に残る秘境の暮らしと最先端のごみ政策。都会の常識と価値観が通用しない世界をこの町で見つけたのです。4年間、休みがあれば上勝町を目指し、訪れるたびに新しい発見がありました。2012年、旅するだけでは満足できなくなった僕は遂にこの町に移住しました。
今は山奥にある古民家を改装して週末限定のバーをやっています。目指すのは町外から訪れた人と地元の人たちとの交流が生まれる店。
そして、この町で知った山奥での暮らしを少しでも体験してほしいと思い、グランピングでの宿泊も始めました。料理には薪と炭を使い、お風呂もお客様自身に薪をくべて沸かしてもらいます。聞こえてくるのは川のせせらぎ。夜空には満天の星空が広がります。現代の日本にもまだこんな世界があることを一人でも多くの人に知ってもらいたいと思っています。
観光化されていない徳島には知られざる魅力がいっぱい
一歩踏み込めば“あなただけの旅”が始まる
観光後進地と言われる徳島。それは裏を返せばまだ発見されていない魅力があるということです。どこにでもあるような田舎の風景の中にも、一歩踏み込めば地元民しか知らないディープな世界があります。イーストとくしまWEBマガジンでは、これからそんな徳島の知られざる魅力をお伝えしていきます。
自分だけの旅を見つけたいと思ったら、ぜひ徳島に来てみてください。
Information
樫原の棚田
http://kamikatsu.guide/spots/104
山犬嶽
http://kamikatsu.guide/spots/112
農家民泊 山挨(やまあい)
http://kamikatsu.life/
いっきゅう茶屋(山っ子もちを販売)
http://kamikatsu.guide/spots/176
いろどり(葉っぱビジネス)
https://www.irodori.co.jp/
ゼロ・ウェイストアカデミー
http://zwa.jp/
カフェ・ポールスター
http://cafepolestar.com/
RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Store
http://www.kamikatz.jp/
Bar IRORI&グランピングBase Camp(上勝開拓団)
http://kaitakudan.net/
Text 仁木啓介
兵庫県出身。1967年生まれ。東京でテレビ番組のディレクターとしてドキュメンタリーやドラマを制作。MBS『世界ウルルン滞在記』では世界各地の秘境を巡る。取材で訪れた徳島県上勝町に一目惚れして2012年に移住。映像制作とバー、グランピングの経営をする(株)上勝開拓団を起業。趣味は里山歩き。