やさしい味わいの京風おでん

裏通りでありながら華やいだ雰囲気を感じるのは、かつて色街であったという話を聞いたせいだろうか。
古くは劇場や映画館があり、徳島市の文化発信基地であったという歴史も併せもつ秋田町。

大通りの賑わいを離れて裏通りへ入れば、暖簾の奥から陽気な声と出汁の香り。
それに誘われるように「おでん盛」のカウンターに腰をおろした。

オープンは2014年、看板メニューは言わずもがなのおでんだが、その味わいは秀逸。
「カツオと昆布でだしをとり、味付けは醤油だけ」と女将のすみ子さん。
しかもいわゆる“継ぎ足し”ではなく、毎日新しい出汁を仕込むのがこの店の流儀。
シンプルの極みだが、ついでもらった皿から出汁を一口すすれば、
すっきりとした中に潜む深みに驚かずにはいられない。
この出汁をたっぷりと含んだ［大根］の旨さたるや！ もはや言葉は不要だ。

おでんの店だが、一品料理やご飯もの、デザートもあり、0次会から〆までいろんな使い方ができる。
カツオと昆布の旨味がきいた京風のやさしい味付けが特徴で、どのネタもいい感じに煮込まれている。
週末限定の［すみこカレー］のファンも多い。座席はカウンターのみ。