特集
2021年。高校生たちの阿波おどり。
日程の縮小、屋内施設のみなど条件はあるものの開催決定が発表された2021年の徳島市阿波おどり。
主要な2協会に所属する有名連に加え、特別出演枠として選抜阿波おどりで4校の学生連の参加が決定しました。
徳島県立徳島商業高校による「徳商連」もそのひとつ。
新型コロナに翻弄されながらも、この夏の阿波おどりにかけて練習を続けてきた高校生のみなさんに現在の心境を語ってもらいました。
(※取材は7月上旬に行いました)
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日本三大盆踊りのひとつ「阿波おどり」を体感しよう!
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蒸し暑い7月の放課後。
自転車置場に集まってきたのは「徳商連」の部員たちです。
顧問の号令で練習がスタートします。
ぞめきの音に合わせて踊りだします。
間隔をあけながら、自転車を置くラインに沿って足を運びます。
美しく弾むように音を響かせる三味線のみなさん。
大太鼓は、女子部員が担当!かっこいいです。
心地よく涼やかな音色を出す篠笛。
ご覧のように踊り子も鳴り物もすべて高校生で構成された「徳商連」は約10年前に発足しました。
初めは同好会でのスタートでしたが5年前に部活へと昇格。
以来、阿呆連に指導を受けながら徳島市阿波おどりや全国高文祭、県内のイベントなどへの出演を重ねてきました。
高校で本格的に阿波おどりをはじめる部員が多数ではありますが、経験を重ねるにつれて立派な踊り子・鳴り物になっていきます。
高校卒業後も連に入って踊りを続けるという部員も多く、阿波おどりという伝統文化の担い手を輩出する場にもなっているんだそう。
今年度は27名の新入部員が加わり、約60名という有名連にも負けない大所帯になっています。
部長として連を引っ張る3年生の眞田涼風さん。
小さな頃から阿波おどりの連に所属していた眞田さんは、同じ連で徳商連に入っていた子に誘われて見学、そのあと入部しました。
「子どもから年配の人までいる普通の連と違って、高校生しかいないので若さが違うなと感じたのが第一印象でした」と笑う。
眞田さんのような部員より、未経験者が多数。
技術の差もあり、うまくいかないと部員同士がすれ違ったりぶつかることもあるんだそう。
「でも、だんだんみんなの技術があがっていくんです。そんなときは部活動としてのやりがいを感じられますね」。
部長になった眞田さんを悩ませたのはチームの団結力。
「同学年の中で一般の連に所属しているのは私だけだったんです。本気で練習に取り組みたい私と、楽しく踊れたらいいんじゃないかというほかの子との気持ちがなかなかひとつにならなくて…。人に相談できないタイプでそのもやもやを抱え込んでしまったんですが、思い切って顧問に相談したり、全員で話し合う機会をもうけて気持ちをぶつけあって少しずつわだかまりを解いていきました」。
さらに眞田さんを悩ませたのが新型コロナ。
「ずっと休校になっていたから練習は一切できませんでした。新しい体制になって初めて
練習ができたときには出遅れた感じがしました」。
2020年、創部初となる演舞場への出演を申し込んだ矢先に阿波おどりの中止が決まりました。
「中止になったときはすごく悲しかったです。でも来年こそ!と思って練習を続けてきました」。
部員同士の間隔はしっかり空けるなど、練習内容も工夫を重ねながら大舞台への希望をつないでいたそうです。
2021年、徳商連に明るい話題が。
「27人の1年生が入ってきてくれたんです!」
感染症対策のため、部活動の勧誘は禁止に。それでも「鳴り物の音をドカドカ響かせて気を引いたり、一人ひとりに距離を保って声をかけていったりして、できる範囲の勧誘をみんなで続けたんです。そうしたら部活動見学に来ていなかった子も入部してくれてびっくりしたけどうれしかったです」。
総勢60名近くまで成長した徳商連。
紆余曲折はあったものの、今年観客の前で踊りを披露する機会を得ました。
「出られると聞いたときは率直にうれしかったです。一番は桟敷で踊れることだけど…。でも夏に大きな舞台に出演する、踊りを見てもらえるのが幸せです」。眞田さんはほっとしたような笑顔を見せます。
今年が徳商連・眞田さんにとっての集大成。
「出演がどうなるかわからなかったときは、部員たちのモチベーションもあがらなかったけれど、なんとかみんなで励まし合って練習してきました。この舞台に出られるのも顧問をはじめたくさんの大人のみなさんが後押ししてくれたからだと思います。応援してくれた人、支えてくれた人への感謝の気持ちを忘れずに、一生懸命踊りたいです」。
フィナーレは部員全員の総踊り。
「ダイナミックに、高校生らしい元気な踊りを見てほしいと思います」。
眞田さんにとって阿波おどりとは?と聞くと、少し考えたあと、こう答えてくれました。
「阿波おどりは…青春かな?運動部じゃないし、まわりの人からはなんで阿波おどり?と聞かれることもあるけれど、どこにも負けないくらい楽しくてやりがいがある。辛いことがあっても最後に楽しさが残る。こんなに青春していることはない!って思います」。
今年入部した藤田伊吹くん。
入部のきっかけは新入生歓迎の部活紹介のとき。
「先輩たちの“あばれ”を見てカッコいい!と思って入部しようと思いました」。
練習では先輩たちの踊る様子を見ながら、手さばき・足さばきを真似ています。
本番での藤田くんの出番はフィナーレのみ。
「踊れる時間は短いけれど、発表できる場があってうれしいです。今からやりがいが沸いてきています!」
今まで阿波おどりの経験がない藤田くん。まだ基本しか覚えられていないからこそ、基本に忠実に踊れたら、と話します。
今年の本番はもちろん、藤田くんは来年以降のことも考えています。
「来年は自分の踊りを披露したいと思っています。そして後輩たちに、今年教わったことを教えられるようになりたいです」
眞田さん、藤田くんをはじめ、ほかの部員たちも徳商連の2年ぶりとなる舞台に向けて気合充分。
男踊りが持つオリジナル提灯。
うちわも高校生らしいデザインに。
談笑する様子は高校生そのもの。でもいったんぞめきが響くと、みんな引き締まった表情になります。
総踊りの練習にも気合が入ります。
学校イベントの中止や休校。withコロナ時代の混沌とした中でも明るい未来を信じている高校生たちは、誰よりもまぶしく輝いています。