特集
アスリートを勝利へと導いた、メイドイン徳島のSWANSサングラス
17日間にわたって開催され、世界のトップアスリートたちによる熱戦が繰り広げられた東京五輪。
メダルラッシュに日本中が沸いた中、一人のアスリートが着用していたことによって一気に注目を集めたアイテムがあります。
そして、それはなんと徳島県で作られたものだったのです!
卓球・水谷隼選手の勝利を影で支えたものとは?
それはどのような経緯で作られたものなのか?
製造した『山本光学株式会社』さんにお話をお聞きしました。
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7月21日から競技がスタートし、8月8日まで熱戦が繰り広げられた東京五輪。大会を通しての日本のメダル数は、金メダルが27個、銀メダルが14個、銅メダルが17個の合わせて58個となり、史上最多のメダルを獲得しました。
中でも男女ともに見事な結果を出したのが卓球。
連日、テレビの前で声援を送っていた人も多いのではないでしょうか。
卓球混合ダブルスで伊藤美誠選手とともに金メダルを、さらに男子団体では銅メダルを獲得した水谷隼選手。
輝かしい結果とともに、各メディアでも話題になったのが水谷選手が使用する特徴的なサングラス。
実はこのサングラスは、SWANSブランドで知られる『山本光学株式会社』の阿波市にある徳島工場で製造されていたのです。
『山本光学株式会社』は東大阪市に本社を構える、創業110年の企業です。
長年培ってきた光学技術を基に、スポーツサングラス、スイミングゴーグル、スキーゴーグルなどSWANSブランドのスポーツ用品をはじめ、産業用保護具、保護メガネなどを作っています。
そもそも『山本光学株式会社』がアスリートと関わりを持つようになったのはいつ頃からなのでしょうか。
「1960年代よりスキーやバイクなどで使用するゴーグルでアスリートのサポートを行っていましたが、サングラスが注目されたのはマラソン競技がきっかけでした」と本社マーケティング部の山尾さん。
1992年に開催されたバルセロナ五輪の際、西日が強く気温も高いコースで有森裕子さんがSWANSのサングラスを着用しメダルを獲得!その映像を見て、一気にランニングギアとしての認知度が高まり一般にも浸透していったんだそうです。
その後も野口みずきさんなど、名だたるメダリストが使うことで数多くのアスリートたちがSWANSのサングラスを使うようになっていったんだそうです。
2年ほど前、『山本光学株式会社』に連絡を入れたのは水谷選手の関係者からでした。
「水谷選手も参加しているTリーグの会場がショーアップされたため、強い照明を使うようになりプレイ中に卓球ボールが見えづらい場面があり、アイウェアで解消することはできないかという内容でした」。
屋外で使うことを想定したデータはありましたが、屋内で使うことは初めて。
特別な環境の中でもしっかり球が見えるよう練習場所を視察したり、試作品を作って水谷選手から意見を聞くなどを重ね、約1年前に完成したんだそうです。
こちらが実際に水谷選手が着用したモデルのサングラス。
レンズの下部にフレームが付いた陸上競技用のモデルに、室内でも球が見やすいよう色を調整した特注のレンズがはめ込まれています。このレンズを製造したのが徳島工場なんです。
「卓球は視線の移動も大きいので、フレームが視界に入らないようなものであること、また細かく激しい動きも多いのでずれにくいことも特徴です」。
その後、試合で水谷選手が着用する機会はあったものの、東京五輪で使用するかは未定でした。
「実際に会場に行くと卓球台に強い照明が当たるようになっていたため、急遽水谷選手のスタッフから予備も含めて送ってほしいと連絡が入りました」。
届いたサングラスを着用し、見事メダルに輝いた水谷選手。
「メダル獲得のニュースを聞き、サングラスに携わったスタッフたちにとって大きなモチベーションアップになったことは間違いないです!」
混合ダブルスで水谷選手が金メダルを獲得した直後は、「あのサングラスはどこの?」「競技中もずれてない」「かっこいい!」などの投稿が急増し、SWANSのものだとわかると公式サイトへのアクセスが集中。一時はつながりにくい状況になったほどの話題になりました。
水谷選手以外では、アーチェリーで2つの銅メダルを獲得した古川高晴選手や、パラ五輪のボッチャ団体で銅メダルを獲得した中村拓海選手らのサングラス、競泳で2冠に輝いた大橋悠依選手が使用するスイミングゴーグルなども製造している『山本光学株式会社』。
「水谷選手をはじめ、アスリートの方からの依頼を受けることで気づかされる可能性は多いです。アイウェアが皆さんの日常生活をより快適にできることはまだまだあると感じる取り組みでもありました」。
レンズを作った徳島工場は、1987年に竣工しました。
「大阪に本社を構える弊社にとって、製造の拠点であるとともに物流の拠点になる徳島はなくてはならない非常に重要な場所です。ここで働く約110人の従業員たちの仕事が、弊社の要でもあるとも言えます」。
また、とくしまマラソンに第一回からブースを出展したり、徳島工場や大阪本社からスタッフがランナーとして参加するなど徳島とのゆかりも年々深まっているんだそう。
徳島工場の生産技術部次長・記本さんはこう語ります。
「徳島の方に『山本光学株式会社』の工場があるということはまだまだ知られていません。今回の話題をきっかけに弊社を知ってもらって、地域の方をはじめたくさんの方にアイウェアの可能性を感じてもらえたらと思います。子どもの頃に通うスイミングスクールで使うゴーグル、大人になって趣味ではじめるマラソンやスノーボードなど、生涯を通じて出会う機会はたくさんあります。そこで、弊社のアイテムを思い出してもらえたら嬉しいですね」。
最後に今後の夢は?と山尾さんに質問しました。
「弊社ではユーザーファーストという製品開発の理念があります。ユーザーとは、トップアスリートでもあり、一般のスポーツ愛好家の方でもあります。製品をお使いいただくユーザーの方を第一に考えたモノづくりを続けていくことが、製品の品質向上につながるのではと思います。
今度もさまざまな機会を通じて、より多くの方に製品を使っていただくことができればいいなと思います」。
SWANSの各種アイウェアはオンラインでの購入も可能です。
徳島から生まれた金メダル級のサングラス、ぜひお試しあれ。
山本光学株式会社
SWANSウェブサイト/https://www.swans.co.jp
※取材はリモートで行いました。写真はすべて『山本光学株式会社』提供