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お遍路グッズの素朴な疑問あれこれ
今年こそはやってみたいお遍路さん。せっかくだから白い服や笠を身に着けて「ザ・お遍路さん」気分に浸ってみたい。
でもお遍路用品はいろいろありすぎて、どんな違いがあるのかどれを選べばいいのかわからない…
そんなお遍路ビギナーの質問をお遍路用品のプロ中のプロ、お遍路用品屋さんにどんどん聞いてみました。
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第10番札所・切幡寺門前通りの『スモトリ屋浅野総本店』
今回お訪ねしたのは、四国八十八ヶ所霊場第十番札所・切幡寺の門前通りで、明治創業以来代々お遍路用品・仏具店を営んでいる『スモトリ屋浅野総本店』の5代目店長・浅野敏司さん。お遍路初心者の「こんな簡単なこと聞いていいのかな?」な素朴な疑問の数々に、やさしく丁寧に答えて下さいました。
丸型とトンガリ型の菅笠、お遍路さんは必ずトンガリ型?
お遍路さんといえばあのトンガリ型の笠をかぶっているイメージが定着していると思いますが、実は円錐形のトンガリ型でも、托鉢中のお坊さん達がかぶっているような平べったい丸型でもどちらでもかまいません。
丸型は今でも農家の人たちが外での作業中でかぶっていることもあるように、顔全体や肩まで覆うことができる日よけとしてとても優れたものです。少々の雨であればこの笠だけで十分しのげます。休憩で笠を脱ぐ時にひっくり返して置くと思いますが、トンガリ型は尖っている分、先端が破れやすいこともあります。
歩いている時に他のお遍路さんがどんな笠をかぶっているか、ちょっと観察してみるのも楽しいかもしれませんね。四国遍路を何回も回っている先達さんや経験豊富なお遍路さんたちは、丸型が多い傾向だと感じます。
五徳は頭の上に乗っていることで笠と隙間をつくり、風通しが良く快適にかぶれます。五徳は全て同じサイズなので頭がスポッと五徳の中に入ってしまうなら、手ぬぐいなどを巻いたりして大きさを調節してみて下さい。
紐をきっちりと結ばないと歩いている最中や風が吹くたびにグラグラして気になりますよね。またグラグラするとむき出しのままの五徳が頭の周りにあたって痛いものです。それが笠をかぶるのをやめてしまう一番の理由なのではないでしょうか。
きっちり結ぶのはコツが要りますし、休憩の時に笠を取るたびにほどいて結び直すのも面倒くさいかもしれません。紐が顎下に食い込むのが気になる人もいます。
現代のお遍路さんのためにお遍路用メーカーさんが開発した、五徳の周りをパッドで覆って紐はヘルメットの様にパチンと留められる菅笠専用の小物もありますよ。
納経帳は大・小どちらのサイズがいいの?四国遍路専用のでなければダメ?
最近ではお遍路に関わらず御朱印ブームですから、お遍路をちょっと試したいとけど白衣や笠はまだちょっとという方でも、御朱印は頂きたいという方は多いようです。
四国遍路では、御朱印帳と言わず納経帳といいます。
お遍路用品点でやはり一番目につく場所に置いてあり、色とりどりの錦の表紙がずらりと並んでいるので、どれにしようか迷ってしまいますよね。一般的には、B5版サイズの納経帳の方が数多く並んでいると思います。
一般的な文具屋さんで入手できる「御朱印帳」は、一回り小さいサイズですね。最近では様々な神社仏閣オリジナルの御朱印帳を作っていらっしゃいますが、そちらもこの小型のサイズが多いと思います。
お遍路の納経帳にもこの小型タイプはあり、歩き遍路さんなど荷物をなるべく軽くしたい、ショルダーバックにさっと入れられる方が良い方たちには小型が人気です。
小型の納経帳の難点は「重ね印」には向いていないということです。
お遍路さんを1周だけでなく、何度も回られる方は1回毎に新しい納経帳を使うのではなく、重ね印といってお寺ごとに同じページに前回と少しずつずらして赤いスタンプ(朱印)だけを押していきます。ちなみに、2回目以降は墨書きの文字は書きません。
重ね印をするには大型納経帳のように十分なスペースがある方が、朱印をきれいにずらして押してもらえますよね。
何十回も、時には百回以上も回っている方の納経帳は、朱印が隙間なく押されてページ一面真っ赤になっていらっしゃいます。お遍路の史料館や歴史博物館に展示されていることもあるので、探してみて下さい。
また、納経帳は、四国遍路専用のものをお勧めします。
88もの御朱印を集めるので、ページ数が多くなります。
また皆さん必ずしも1番札所から順々に回るわけではなく、週末やお休みごとに少しずつお寺に参拝しコツコツと何年もかかって一周される方が大多数と思います。この場合、参拝するお寺の番号が飛び飛びになりますので、徳島の札所の様に最初の方のお寺さんならばまだページを数えることもできますが、高知や愛媛のお寺さんになってくると、どこのページか数え切れなくなってきますよね。
四国遍路の専用納経帳であれば、どのお寺さんはどのページと番号や寺名が入っているのでパッと開いてわかります。ご自分で見た時にも、どのお寺さんがまだ参拝できてないか、漏れがすぐに発見できますよ。
お遍路さんの白い服、みな同じなの?
お遍路さんといえば白装束。ツアーで参拝しているお遍路さんが白い服で何十人も一緒にお参りしていると、皆おそろいに見えますよね。
半纏や作務衣の上衣のような形で背中に「南無大師遍照金剛」の文字が入るのが基本形で、ここに生地の素材の違いや袖の長さの違いが加わります。
袖の無いベストのような白衣は笈摺(おいずる)と呼ばれ、一番伝統的な形。
昔は皆さん和装でしたので、袖ありの白衣は難しかったのでしょう。今では和装のような大きな袖の服を着ていないので、七分袖の白衣も多く出ています。
できるだけ軽く、畳んだ時のコンパクトさを追求するのであれば袖なしの笈摺がベスト。
ただし日中延々と日差しにさらされる歩きお遍路さんであれば、長袖の白衣で身体を覆っておいた方が日焼け防止にもなります。
今は化繊で軽量速乾のスポーツ用品素材でできている白衣もあり、袖が大きいので風通しも良くて夏の暑い日に着ていても快適。
木綿素材だと少し乾きにくいのと、毎日着て洗っているうちに徐々に黄ばんでくるので、毎日着続けて洗う頻度も多い歩き遍路さんは、化繊の速乾素材の方が便利だと思います。
お遍路さんが、首から身体の前に垂らしているカラフルな幅広リボンは飾りですか?
あの幅広リボンは輪袈裟(わげさ)と呼ばれる、首からかける輪になった袈裟です。
この袈裟はお坊さんが身に着けている袈裟とまさに同じもので、お坊さんの場合は身体を包み込めるほど大きな布ですが、輪袈裟はあれをとてもシンプルにした形なのです。
四国遍路を回る動機は皆さん本当に様々ですが、お寺に参拝されるのであれば仏様にお会いになる際の正装として、着用した方が良いですよと全てのお遍路さんにお勧めしています。
四国遍路のお寺以外でも、日本の他の地域のお寺でも輪袈裟を着けてお参りしている人を見かけることは珍しくありません。法事の時にいつも着用されている方もいらっしゃいます。これからいろんなお寺にお出かけされる時にちょっと注意して見てみて下さい。
四国遍路では輪袈裟の表面に『四国八十八ヶ所巡拝』『南無大師遍照金剛』と刺繍されたタイプをよく見かけますが、四国遍路以外でも使えるよう何も文字が書いていないタイプや、ご自身の宗派の宗紋のみのタイプを選ばれる方が多いです。
無地の生地でも柄の生地でも、お好きな色、柄をお選びください。
輪袈裟はトイレに行く時と食事中は外します。いつも着けていると段々馴染んできて忘れがちですが、そこだけは覚えておいて下さい。
金剛杖ってなんだか重くてゴツゴツしてる感じなんですが…
お遍路さん用に作られている金剛杖は、大多数がきちんと角を取って表面を滑らかにして握りやすく仕上げてあります。
実は材質もツガや杉、ヒノキなどあり、一般的な金剛杖よりも少し長めのものもあります。材質によって重さが違うので、試しにいろいろ持って自分にしっくりくるものを選んで下さい。ヒノキよりは杉が軽めなので、女性には良いと思います。
杖の全面に般若心経が書いてあるものもありますし、無地のものもあります。
いずれも共通しているのは、杖の頭の部分に弘法大師を表す梵字が書いてあることです。これは、四国遍路において金剛杖は弘法大師さまと同じだからです。
だから、杖の頭の部分を錦の杖カバーで隠すのですね。弘法大師さまの頭を素手で握りしめるわけにはいかないでしょう?
数珠は長い数珠でなければダメなの?
高野山や四国遍路のお寺さん、遍路用品店にある数珠はネックレスの様に長いタイプが多いので、普段短い小さなタイプの数珠しか見たことがなかったなら少し戸惑うかもしれません。
四国遍路の時は長い数珠を改めて購入する必要があるかというと、全くありません。
ご自身がもうお持ちのものや、長短好きなタイプのものを何でもそのまま使用して構いません。長いタイプの数珠を使ってみたいのであれば、色や素材、お値段も幅広くありますので、ご自身に最適なものをお好きに選んで見て下さい。
長いタイプの数珠は一見ネックレスのようにも見えますが、歩いたり休憩中など使っていない時に本当にネックレスの様に首にかけたりしてはいけません。
使わない時はしまっておいて下さい。
歩いてお遍路したいけど、道に迷いそうで不安…
お遍路道は、昔から地元の人達が里や山の中で日常的に歩いていた道ですが、車社会の到来とともに広い車道があちこちに開通した今では、裏通りや家と家の間の狭い路地になってしまいました。
また、まっすぐな車道に比べると、クネクネと曲がり角を曲がりながら進むことも多いため、一つ角を見逃してしまうととんでもない方向に迷っていってしまうこともあります。
でも、大丈夫。昔ながらの遍路道を曲がり角一つ一つまで詳細に記した地図・ガイドブックがあるのです。
しかも近年国外からはるばる四国遍路のために訪れる外国人さんも困らないように、英語版もきっちりあります。
ちなみに、日本語版と英語版は同じ本をただ英訳しただけではなく、本の大きさや内容も少し違います。
時代とともにつねに移り変わってきた遍路道、同じ区間でも複数の道筋がある場合も多いのですが、日本語版では現在最も一般的に歩かれている道を厳選して掲載しています。
英語版は、日本語版に記載されている一般的な遍路道にプラスして、四国のみち(四国自然歩道)などルートの選択肢がより多くなっていて、できる限り未舗装道や山道を歩くことを好む傾向の外国人お遍路さん達のニーズに沿った内容になっています。
また、四国遍路の遍路道の特徴は道標がとても多いこと。
道沿いのあちこちで昔のお遍路さんや地元の人達が建てた石柱に彫られた手が正しい方向を指差していたり、地元の人やお遍路関連団体がつけた手作りのサインがあります。
もちろん、車でお遍路する場合はナビでバッチリ。
ではこの道標だけで歩けるかというと、地域によっては道標が少ない場所や古くなって壊れてしまったところもあるのが現状。
特に他の地方から来て土地勘のない初心者のお遍路さんは、ガイドブック入手を強くお勧めします。
お寺で一枚の長い紙に御朱印を集めている人を見かけました。
四国遍路や西国三十三観音霊場などいくつもお寺を回る巡礼で御朱印をいただく時、納経帳ではなく掛け軸用の長い紙に御朱印を集める方もいらっしゃいます。
また、お一人で納経帳一冊と掛け軸一幅どちらも御朱印をいただくことも可能です。
納経軸もお遍路用品が買えるお店なら通常おいてあるはずです。
納経軸は巻いている状態でも長さがあり、また素材はとてもとても薄い布地ですので、歩いてお遍路する場合は持ち運びに特に注意が必要です。
また、全札所を参拝し終えて御朱印を集め終わった後でも、その納経軸単体ではまだ完成形ではありません。
床の間や美術展で見る掛け軸は錦や単色の紙や布の真ん中に絵や文字が描かれた部分が貼ってありますよね。納経軸はその真ん中の絵の部分だけだと思って下さい。
そのままでは壁に掛けられないので、表具店できちんと掛け軸にしてもらう必要があります。
四国遍路第十番札所・ながーい石段のお寺、切幡寺
ご覧の通り階段続きの切幡寺、歩き遍路で重い荷物を持ったまま登り下りするのは考えただけでぞっとしますが、朗報です。
『スモトリヤ浅野総本店』では、歩き遍路さんの荷物を参拝の間お接待で預かってくれます。お店の前を通り過ぎる時に、気軽に立ち寄ってお願いしてみて下さい。
また、浅野店長は海外留学や赴任の経験もあり、英語が堪能。
まだ歩き始めたばかりでいろいろ不安なことだらけの外国人お遍路さんにも心強い味方ですね。
●スモトリ屋浅野総本店
徳島県阿波市市場町切幡字観音173 Tel: 0883-36-3032
https://www.sumotoriya.com/
●四国八十八ヶ所霊場第十番札所 得度山灌頂院切幡寺
徳島県阿波市市場町切幡字観音129 Tel: 0883-36-3010
https://88shikokuhenro.jp/10kirihataji/