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お米はおいしいだけじゃなく、おもしろい!
「関山米穀店」でお米の魅力に触れてみる

お米はおいしいだけじゃなく、おもしろい! 
「関山米穀店」でお米の魅力に触れてみる

日本の食卓に欠かせないものといえば、お米。
収穫年の12月31日までに精米・包装されたお米を「新米」と呼び、一般的に8~11月頃から出始めてきます。
全国各地には名だたる米どころがあり、最近では地域を代表する新たなブランド米が続々と登場しています。
群雄割拠のお米業界の中で、徳島のお米の魅力とは? そして、日本のお米の未来とは?
徳島市で150年以上続く米穀店に詳しくお話してもらいました。

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お土産 グルメ


秋の味覚を代表する新米は、収獲・出荷の時期が8月~11月とされていて、西から北へと北上していきます。
地域や品種によって時期に若干のズレはありますが、南の地域では8月中、関東地方では9月中、 東北や北海道では10月とされています。


今回、お米についてのお話を聞いたのは徳島市佐古一番町にある『関山米穀店』さん。
150年以上続く米穀店です。

 ▲「たかが米、されど米」という言葉にグッときます。
▲「たかが米、されど米」という言葉にグッときます。

店内に入ってびっくり! にぎやかなポップが目に飛び込んできます。

「これはまだ少ないほうなんです。これから全国の新米を入荷してくると、もっともっと派手になってきます」と説明してくれたのは、六代目の関山隆大さん。

これらのポップは関山さんの手作りです。
お米が入荷すると試食して、感じた食感や味を表現しているんだそうです。

 ▲冬の時期の店内。天井近くまでポップがびっちり!「夢にまで見た!あのガッチリ感」「あの人も大好き!シャキ!フワ!サラ!」などユニークな表現が散りばめられていて、読んでいくだけでも楽しい!
▲冬の時期の店内。天井近くまでポップがびっちり!「夢にまで見た!あのガッチリ感」「あの人も大好き!シャキ!フワ!サラ!」などユニークな表現が散りばめられていて、読んでいくだけでも楽しい!
 ▲カラフルなオリジナルTシャツ。とどまることのないお米愛が詰まっています。
▲カラフルなオリジナルTシャツ。とどまることのないお米愛が詰まっています。

こちらは味チャート。
表情の濃さで味わいを、輪郭で食感を表現しています。

ポップにはさらに粘りや粒の大きさなどが書き込まれ、産地についてはもちろん、どんな料理に合うか、一緒に食べるのがおすすめのおかずなども記入されています。

「お米は品種によって個性があり、食べ比べると味がぜんぜん違うんです。そこに加えて、人によっても好みも分かれますよね。甘みが強い、さっぱり系、柔らかめ・固めなど…。専門店としておいしいものを売るというのではなく、その人に合うお米をセレクトして提案していきたいと思います」と関山さん。

独自の“ベロ(舌)メーター”で各地のお米を愛情いっぱいに提供する関山さんですが、家業である米穀店で働き始めた当初は、お米には無関心で「どれを食べても同じだろう」という感覚だったそうです。
そんな中、たまたまテレビで紹介されていた佐賀県の品種[さがびより]が気になり、佐賀県の農協に直接電話して送ってもらった玄米を目にした瞬間に、その違いに衝撃を受けたそうです。
ひとつひとつにボリュームがあり美しい粒を炊いて食べてみると、そのおいしさにさらなる感動を受けたんだそうです。
そこから品種の情報をもらって勉強したり、米を手に入れるため他県に足を運んだり、全国の品種を取り寄せては実食することを繰り返した結果、品種ごとに異なるお米の魅力を伝えていきたいと強く感じたんだそうです。

今やメディアでも取り上げられるほど独自の方法でお米を売るお米マイスターである関山さんに、徳島のお米について聞いてみました。

「全国にはたくさんのお米の産地がありますが、収穫量でいうと徳島は全体の36~38番代。新潟や富山に比べると平地が少ないというのが理由だと思います」。
他の地域に比べて徳島のお米の特徴はあるのでしょうか?

 ▲徳島でよく目にする「あきさかり」。ソフトでクセのない味わいで幅広い世代に人気だそうです。
▲徳島でよく目にする「あきさかり」。ソフトでクセのない味わいで幅広い世代に人気だそうです。

「全国で育てられている品種・コシヒカリで食べ比べると違いがよくわかります。徳島県のお米は柔らかめの食感ですね。富山で育ったコシヒカリはずっしりとした食感なんですよ」。
昔から徳島の柔らかいお米を好み、いろんなブランド米を食べ比べても「徳島のお米が好きやな」という人も多いそうです。

「同じ徳島でも作り手によって味が違ってくるんですよ。試食していると生産者さんの情熱を感じられますね」と関山さん。

 ▲阿南市は毎年8月に新米が収穫されることから早期米でも知られています。
▲阿南市は毎年8月に新米が収穫されることから早期米でも知られています。

また、甘く粘りと艶があり冷めてもおいしいのが特徴の「あわみのり」は徳島県でしか作られていない品種です。

しかし、収穫量が少ないことから栽培する農家さんも減ってきており、いずれ幻のお米となってしまうのではと関山さんは危惧しています。

北海道「ゆめぴりか」「ななつぼし」、青森「青天の霹靂」、福井「いちほまれ」、山形「つや姫」。テレビCMでも見かけるこれからのブランド米も、開発から市場に定着するまで10年はかかっています。
「徳島独自のブランド米の開発が進んでいるとは聞きますが、時間がかかるものなので…。徳島の米穀店としてはあわみのりをなんとか続けてもらえたらと思いますね」。

コロナの影響でお米の消費が減り、2年前に比べると価格が下がっているそうで「このままだと今年をきっかけにお米作りを辞める農家さんが出るんじゃないかと思います」。

徳島、そして全国で育つお米の魅力を伝えることは日本の食の未来を支えること。
小売業は、商品の良さを伝えることができる場だからこそ、知識を深めアピールしながら全国の農家さんを応援したいと関山さんは話します。

「お米も嗜好品の時代だと思います。米離れと言われているこの時代、みなさんに関心を抱いてもらうことは米の価値を高めることになります。生産者さんの志気を高めるためにも、頑張っていきたいと思います」。

 ▲精米をしたものを店頭に並べておくのではなく、注文を受けてから精米をすることで新鮮なお米を提供しているそう。
▲精米をしたものを店頭に並べておくのではなく、注文を受けてから精米をすることで新鮮なお米を提供しているそう。
 ▲精米したお米をさらに小米選別機にかけます。欠けたり割れたりしているお米をはじくことで、おいしさがまったく変わってくるそうです。
▲精米したお米をさらに小米選別機にかけます。欠けたり割れたりしているお米をはじくことで、おいしさがまったく変わってくるそうです。
 ▲精米したてのお米はぴっかぴか!
▲精米したてのお米はぴっかぴか!

また、お米は約2週間で味が落ちてしまうんだそう。できるだけおいしい状態で食べてほしいと、最近の家庭に合わせて1キロから購入できるようにしています。

 ▲精米したお米を袋に入れるたびに関山さんが品種などを手書きしていきます。
▲精米したお米を袋に入れるたびに関山さんが品種などを手書きしていきます。

「1キロでだいたい6合分なので食べ切りやすく、食べ比べするのにもちょうどいい量だと喜ばれています」。
詰め合わせにしてギフトにするのもおすすめだそうです。

「専門店だからこそ出会えるお米もたくさんあります。お米っておもしろいなと感じてもらえるよう、これからも店作りや勉強に励みたいですね」。

概念を打ち破り、新たな挑戦で徳島、また日本の食文化に貢献する「お米の伝道師」「お米アンバサダー」とも呼べる関山さん。

ここに来て好みのお米に出会えたなら、毎日の食卓はより豊かに、よりおいしくなりそうです。

関山米穀店(せきやまべいこくてん)
徳島県徳島市佐古一番町7-11
TEL.088-652-4801
営/9:00~18:00
休/水・日曜
P/あり