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徳島東部の上勝町に注目!日本の原風景が残る「秘境」でSDGs体験
徳島県東部にある上勝町は、「樫原の棚田」「山犬嶽」といった日本の原風景が残る風光明媚な場所です。
その一方で、昨今話題の「SDGs(持続可能な開発目標)」を具現化する取り組みが長く行われていて、ごみをゼロにするという目標「ゼロ・ウェイスト」を体験できる宿泊施設「HOTEL WHY」も誕生。
今回は「秘境」と「先進」という、二つの相反する要素を併せ持つ徳島県上勝町の魅力をご紹介します。
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ゼロ・ウェイストの町、上勝町とは?
徳島市から車で50分ほどの場所に、上勝(かみかつ)町は位置しています。それほど中心部から離れていないにも関わらず、江戸時代からほとんど変わっていない風景や人々の営みが残る、秘境と呼べるような土地です。
その一方で、多くの人が海外からも視察に来るような、先進的な取り組みが行われている自治体でもあります。その一つが環境問題に対する取り組み。町内には「SDGs」を学べる数々の施設があり、今注目が集まっています。
「SDGs」、日本語にすれば「持続可能な開発目標」といった言葉で、2015年に国連で採択されました。2019年頃から日本でもテレビ番組や街頭ポスターなど、様々な場所でこの言葉を目にするようになってきましたね。
上勝町は、そんなSDGsのことを学ぶ際に、ぜひ訪問してほしい場所です。2003年に「2020年までにごみをゼロにする」という目標をたて、「ゼロ・ウェイスト宣言」を日本で初めて行った場所でもあります。
2020年の時点で、その目標達成率は約8割。残りの2割をどう達成するのかが今後の課題ではありますが、このリサイクル率自体は世界的に見てもかなり高い数値となっています。(国内の市町村における平均リサイクル率は約2割)
その高い達成率を支えている施設が、「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」です。この施設は、地域の人たちが家庭のゴミを持ってくる、所謂ごみ収集場なのですが、なんとゴミの分別は13種類45項目(2021年現在)もあり、当然ながら日本で最多となっています。
さらに、2020年にはセンター全体がリニューアルされ、「ゼロ・ウェイストアクションホテル」として、宿泊施設も誕生しました。
<上勝町ゼロ・ウェイストセンターの基本情報>
住所:徳島県勝浦郡上勝町福原下日浦7-2
電話番号:080-2989-1533
アクセス:徳島市内から車で50分
写真:(C)Transit General Office Inc. SATOSHI MATSUO
上勝町の環境への取り組みを知りたいなら、まずこの2店へ
そんな上勝町でまず訪れたいのが、「カフェ ポールスター」です。地域の景観に溶け込む佇まいで、お店のコンセプトは「上勝町を五感で感じられるショールーム」。
このお店のオーナーである東輝美さんは、ゼロ・ウェイスト政策の立役者の一人である、故・東ひとみさんのご家族。東さんに、このお店を上勝町にオープンした理由やここがどういう場所かを聞くと、次のような答えが返ってきました。
東さん「私はもともと上勝町の出身で、ゼロ・ウェイスト政策で世界的にも先進的な取り組みをしているこの町が好きでした。その町で田舎にはあまりない、かっこいい仕事をしながら暮らしていきたい、と思い続けた結果がこの場所につながっています。店名のポールスターというのは北極星のこと。夜空に輝く北極星のように、たくさんの人がここを目印に訪れ、上勝という町を感じ、情報を収集できる拠点になればと思い名付けました。」
そんな素敵なコンセプトを基に、2013年にオープンしたカフェ内では、ゼロ・ウェイストの理念が具現化される取り組みが、色々な点で見られます。
例えば、基本的におしぼりやストローは出さない、量り売りの調味料を取り扱っている、スコーンやお菓子などの持ち帰り商品は一つから買える、もちろんレジ袋はナシ、といった目に見えるものは、その一部。
他にも、野菜は皮を剥かずに調理する、生ゴミはコンポストで堆肥化する、といったお客目線ではわからないところまで、徹底しています。使う食材もほぼ上勝のもの。地産地消で、必要なものを必要な分だけ使っているのです。
「鶏団子と地元野菜の煮込み」といった日替わりランチや、上勝町の柑橘を使ったタルトなどのスイーツ、その一つ一つに物語があります。ご利用の際は、そんな点にもぜひ注目してみてください。
<カフェ ポールスターの基本情報>
住所:徳島県勝浦郡上勝町大字福原字平間32番地1
電話番号:0885-46-0338
アクセス:徳島市内から車で1時間
上勝町ではマイクロブルワリー「RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Store」も見逃せません。中に入るとまず目に入るのが、空き瓶を使ったシャンデリアや、高い天井までびっしりと並べられた窓枠。これらは全て廃材から作られています。
SGDsにおいてよく聞かれる、リサイクルやリユースといった単語は「中古」や「古い」というイメージが強いかもしれません。しかし、ここでは廃材がオシャレな姿へ見事に生まれ変わっています。
醸造しているクラフトビール「KAMIKATZビール」にも、本来捨てられるだけだったものが、香りづけなどに有効活用されています。その中には、上勝町の特産品である柑橘の「柚香(ゆこう)」の皮や、お茶の葉なども含まれています。
<RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Store(ライズアンドウィン ブルーイングカンパニー バーベキューアンドジェネラルストア)の基本情報>
住所:徳島県勝浦郡上勝町正木平間237-2
電話番号:0885-45-0688
アクセス:徳島市内から車で45分
ゼロ・ウェイストを体感できるホテルがオープン
ごみゼロの日の2020年5月30日には、センター内に宿泊施設もオープンしました。その名も「HOTEL WHY」。ここは、ゼロ・ウェイストアクションホテルという位置付けで、ゼロ・ウェイスト政策を実際に体感できるという点が多くの人に注目され始めています。
この施設が利用者に投げかけるテーマは「なぜ?」という疑問。空から見ると施設自体の形が「?」になっているのも、そのテーマから生まれたアイデアです。
「なぜそれを買うのか?」「なぜそれを捨てるのか?」、日常生活ではあまり意識しない疑問に、ここでは向き合うことができるのです。
そのため、チェックイン時には施設全体の案内がセットとなっており、上勝町のゼロ・ウェイスト政策を学ぶところから滞在が始まります。
全部で4つある部屋は、すべてメゾネットタイプの客室となっており、1階と2階を使って最大4人まで利用できます。太陽光がふんだんに降り注ぐとても開放的な作りで、山側であれば上勝町の山々を見渡すこともできます。
吹き抜けの構造なので、室内でも圧迫感はなく、自然の中にあるコテージのように気が休まる雰囲気となっています。
全棟を利用しての一棟貸しプランもあり、その場合は16人までの貸し切り利用が可能です。
もちろん部屋のインテリアや設備にも、ゼロ・ウェイストの理念が刻み込まれています。
例えば、天井まで一面の窓は、すでにご紹介したマイクロブルワリーのものと同じく、廃材となった窓枠をいくつも組み合わせたもの。部屋の真ん中に立つ檜も上勝町で手に入ったもの。枝をある程度残した状態で、大黒柱のように2階まで貫いた形で配置されています。
その他にも、細かなところで発見があるはず。滞在の際には、そんな点にもご注目ください。
ゴミも自分で分別!?上勝のSDGsへの取り組みを楽しみながら学ぶ
もちろんただ寝て起きるだけでは、いくら部屋の内観などで学びを得たといっても、体感とまではいかないでしょう。ですが、ここでは様々なシーンで学びの場が待っています。
チェックイン時には、使う分だけの石鹸を自らで切り分け、サービスコーヒーも飲む分だけを量って部屋に持っていくという形でゼロ・ウェイストを体験。さらに、宿泊の際に出たゴミはすべて自分で分別し、チェックアウト時にゴミステーションへ持っていって、45分別を体験するのがルールとなっているのです。
1泊ではそんなにゴミも出ないかな、と思いきや、上勝に来る途中でコンビニやスーパーなどを利用していると、意外と数種類のゴミが出ているものです。自分で分別することによって、ゴミの量やその種類、分別のポイントやその行き先などを意識することができます。
「HOTEL WHY」では、ゼロ・ウェイスト関連の体験だけではなく、近くにあるダム湖でのSUPや、施設周辺のハイキングなど、アウトドアのアクティビティも用意されています。
施設の周辺は自然の宝庫。ハイキングにピッタリな高丸山や、日本最長の林道である「剣山スーパー林道」の起点もありますよ。また、このあとご紹介する山犬嶽や樫原の棚田といった自然スポットも。
施設側のプログラムは用意されていませんが、滞在中や滞在前後に楽しんでみてはいかがでしょうか。「秘境」とも言われる上勝町のもう一つの魅力を知ることができます。
宿泊のプランには朝食が付いていて、部屋で食べてからアクティビティを楽しむこともできるのですが、お弁当にしてもらって、ハイキングなどに持っていくという楽しみ方もできます。
<HOTEL WHY(ホテル ワイ)の基本情報>
住所:徳島県勝浦郡上勝町福原下日浦7-2
電話番号:080-2989-1533
アクセス:徳島市内から車で50分
写真:(C)Transit General Office Inc. SATOSHI MATSUO
苔と棚田も上勝の自慢、インスタ映えも!
最後は、上勝町で外せない自然のスポットを2ヶ所ご紹介します。まず一つ目は、徳島県内屈指の規模を誇る苔の群生地「山犬嶽(やまいぬだけ)」です。岩や木の根っこが緑で真ん丸になっていて、写真映えも抜群のスポット。
苔は自生しているため、一年を通して見ることができますが、時期によって見え方が違ってきます。緑の色が特に強く、最も見応えがあるとされるのは初夏の頃。梅雨の雨を浴びて苔たちはとても生き生きとし始めるのです。
また、山犬嶽では四国八十八ヶ所巡りのミニバージョンもあります。ミニとは言っても、88もの祠を巡るのは簡単ではありません。
苔の群生地までは、駐車場から30分、登山口から山道を30分、とほぼ1時間はかかる距離。しかも、到着までには急な傾斜の道も多くあるので、訪問の際は軽い登山をするくらいの心構えが必要です。
苔の名所を楽しんだ後、体力に余裕があれば、ぜひ四国八十八ヶ所巡りにも挑戦してみてください。
<山犬嶽の基本情報>
住所:徳島県勝浦郡上勝町生実萱木屋
電話番号:0885-46-0111(上勝町産業課)
アクセス:徳島市内から車で1時間、さらに駐車場から歩いて1時間
もう一つ、山犬嶽に向かう時に通る「樫原の棚田」も自然スポットとして見逃せない魅力を持っています。初夏は青々とした田んぼですが、田植えが始まる少し前の水を張っている時期も美しく、その時々で見られる景色が変わっていきます。
平成11年に「日本の棚田百選」に認定され、平成22年に徳島県で初めて「国の重要文化的景観」に認定された棚田は、周辺の自然の雰囲気とも相まって、ついつい写真を撮りたくなる絶景です。
撮影自体は特に禁止されていませんが、勝手に畦道に入って行くことや、置いてあるものを移動させるといった行為は厳禁です。農家さんに迷惑がかからないように楽しみましょう。
<樫原の棚田の基本情報>
住所:徳島県勝浦郡上勝町生実白鶴23
電話番号:0885-46-0111(上勝町産業課)
アクセス:徳島市内から車で1時間
上勝という秘境で学ぶ、先進的なSDGs体験
豊かな自然は残しつつ、先進的な取り組みを続けている徳島県上勝町は、SDGsやゼロ・ウェイストを体験する場所として、これ以上ない環境と言えるでしょう。
徳島といえば、鳴門や阿波おどり、祖谷のかずら橋などが有名ですが、そのほかにもどんどん注目スポットが増えてきています。ぜひ上勝町で、この町でしかできない体験を味わってみてください。
2021年3月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
This article originally appeared in LINEトラベルjp
https://www.travel.co.jp/guide/
Text & Photographs by 岡本大樹